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『奈良少年刑務所』を見学…。

先日、奈良少年刑務所の公開イベントが開催されていましたので、施設見学に行ってきました。
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写真は、刑務所の塀。高さは4.5m。
奈良少年刑務所の前身は、『明治の五大監獄』の一つ、奈良監獄です。
設計は山下啓次郎氏。

明治中期、日本にも、欧米に負けない近代的な監獄を…。という政府の意向の下、
司法省の技師として、アメリカをはじめ、イギリス、フランスなど、約30の監獄を視察し、この監獄をはじめ、全国に5つの近代的な監獄を設計されました。
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これらの監獄、近代的で平面計画もユニークなのですが、煉瓦造りで建築的にも美しいというのが特徴。

刑務所に何故ここまで凝る必要があるのか??と現代社会では非難されそうですが、それは、古き良き時代。欧米に追い付け追い越せという時代ですから、潤沢な予算をかけ、国の威信をかけて建築されたのでしょうね。
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欧州の古城を思わせるような、監獄の表門

 

そのおかげ?あってか、この美しい刑務所、耐震改修も含めてホテルにコンバージョンされるとのことで、刑務所として一般公開されるのはこれが最後の機会なのだそう。
0そういう訳か、沢山の来場者が訪れ、どこもかしこも凄い行列。

なので、所内の写真も撮影しましたが、人が沢山写っていて、なんとなく刑務所感が薄れているような気がしないでもありませんが、そこは、お許しを。😅

それでは、この旧奈良監獄内部に入っていきましょうー。

この監獄(刑務所)の特徴が、ハビランド・システム。
看守が立つ監視所を全体の中心に据え、複数の収容棟を放射状に配置しています。
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上空写真。この放射状の構造により、監視所に立つ看守の目は常に全方位の収容棟に行き届くようになっています。

で、実際に、その監視所から、各収容棟を望んだのが、下写真。
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パノラマ撮影したので、横一列に並んでいるように見えますが、実際には、この監視所を中心にして、扇状に廊下が配列されており、全ての廊下が一望できるようになっています。

非常にユニークな設計で、別の施設を含めても、このような空間構成はなかなかお目にかかることができません。

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廊下から逆に監視所を見たところ。建物は2階建で、監視台前面が吹き抜けになっており、2階の五本の廊下だけでなく、1階の廊下も見渡せる設計。

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1階から撮影した写真。

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収容棟廊下。廊下も真ん中が吹抜けになっており、下階を見渡せる空間構成。監視所の周囲もそうでしたが、吹抜けに網状の鋼棒を張り巡らしているのが一般に無いデザインですね。

通常は吹抜け周囲に手摺を巡らせるところですが、視野に対する阻害物を極力無くしたかったので、平面的に転落防止用の網柵を設置したのだと思われます。
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ちなみに、1階から吹抜けを覗くと2階の通路を歩いている人が良く見えます。

このように、監視する事を最重要目的にした工夫が随所に見られ、非常に興味深かったです。
流石にプリズンブレイクのマイケルでも、ここは脱獄できないのでは?と思わせる雰囲気があります。(ドラマ見た人、分かると思います。。)

つづいて、監房。

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監房の扉。木製なのは以外でしたが、下写真のように、この扉の厚みがスゴイ。

しかも通常の扉はフラッシュ(中央に骨組をつくって、両側に薄板張り)なのに対して、この扉は全てこの柱のような骨組で隙間無く組まれており、ゼッタイ、逃がさないぞ感が滲み出ていました。

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約8cmの厚みがある、無垢の扉。

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鋼製の頑丈そうな錠前。

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食事の受け渡しなどに使われる小扉。

そして、監房内部。
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広さは3畳ほど、内部はトイレと洗面だけ、というシンプルな空間。

また、当然ながら、窓には、頑丈な鉄格子。
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一般の施設では、外部からの侵入者防止に使われる物ですが、ここでは内部からの脱獄を防止する為の物。同じ鉄格子でも、利用目的が正反対ですね。

 

最後に、今回の見学での私のベストショット。
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収容棟の廊下を歩いている時、ちょうど、西窓から夕陽が射し込んできて、空間をオレンジ色に染め上げました。よく見ると、天井もアーチ状で、スラスト用構造材のディテールも凝っており、一瞬、監獄にいることを忘れてしまいそうに…。

この空間が改修され、どのようなホテルとして生まれ変わるのか、今から楽しみ。
ホテルになったら、一度、一泊してみたいですね。

囚人ではなく、お客として…😎

 

監獄という通常では入ることができない特殊施設を見学できたのは非常に貴重な経験でした。
イベントの主催者様、ありがとうございました。😀

矢野

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