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建築ブック『検査済証のない建物の増築』

達が設計活動を通じて培ってきた建築の知恵や知識の中で、皆様のお役に立ちそうな情報をご紹介させていただく『建築ブック』の第9回。

前回は、検査済証の重要性についてお話ししましたが、

今回はそれに関連して、検査済証の無い建物への増築(大規模修繕、大規模の模様替え、用途変更も含みます。以下:増築等)についてお話したいと思います。

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現況調査での構造体の掘削調査(基礎)の様子

まずはじめに、検査済証を取得していない建物でも、確認申請手続きを経て、正式に増築工事を行うことは可能か?についてですが、現在では「既存建築物の現況調査ガイドライン」という制度が整備されており、制度上は可能です。

ですが、実際は、ご想像以上にハードルの高いものとなります。

具体的には、おおむね下図のような流れです。

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⑦以降は、一般的な設計・申請・工事・検査の流れですが、問題は、①~⑥の現地建物調査です。もう少し詳しくお話しします。

①事前協議(1回目)

検査済証の無い既存建物(以下:既存建物)について、現地調査を行う際の調査方法、調査項目、調査範囲について、指定確認検査機関(以下、指定機関)や特定行政庁と折衝を行います。

※特定行政庁:建築基準法で定められた用語で、その地域で建築基準法の運用・監督を担う行政の長(都道府県知事、市町村長)を指しますが、実務上では、その下にある、都道府県、市町村の建築指導課などの部署とご理解いただければよいと思います。

②建築士による現地調査1

まず前提として、検査済証を取得していない建物というのは、建築基準法の規定通りに建築されているかどうか、公的に証明されていない状態です。

したがって、法的にグレーな状態で使用されている既存建物を調査し、その建物に関連する法規に適合しているかどうか、証明していかなければなりません。

この現地調査1というのは、調査のガイドラインで規定されているわけではありませんが、この後に行う現地調査2ほどはコストがかからない、以下のような目視や測量などの現地調査のことです。

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簡易調査の一例

仮に、この段階で法不適合部分(違法部分)が見つかり、それを是正するために、多額の費用が発生する場合、建物所有者の方とご相談の上、増築不可で調査は終了です。

③事前協議(2回目)

制度的に現況調査報告書という正式なかたちで指定機関等に書類を提出するのは⑧の段階ですが、後々私共建築士側と指定機関側において、法律解釈の違いが無いように、事前に②の現地調査内容を基に協議し、双方の認識を擦り合わせます。

また、④の現地調査2(構造体の調査)についても、この段階で協議(調査方法、調査範囲)します。

④建築士による現地調査2

③の段階までで大きな問題が無かった場合、構造体の調査(改修内容で不要な場合も有り)を行います。

構造体の調査は、下部構造(基礎)と上部構造(柱・梁・壁)のそれぞれについて行います。

以下は、実際に行った下部構造(基礎)の調査(RC造)です。

基礎調査に先立ち、工事会社に依頼して重機で掘削工事を行い、基礎を露出させます。

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露出した基礎の断面を計測した後、コンクリートを斫り、鉄筋を露出。

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配筋の状態も調査します。
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調査個所の補強工事(配筋工事+コンクリート打設)を行った後、埋め戻します。
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続いて上部構造である建物の柱、梁、壁についても以下のような電磁波レーダを用いて鉄筋探査と寸法の測定を行い、配筋の状況を調査します。
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この構造体調査では、問題はありませんでしたが、もし、この段階で問題が発覚した場合は、②と同様に建物所有者の方とご相談の上、増築不可で調査は終了となります。

 

⑤事前協議(3回目)

この段階まで至れば、増築できる可能性が大幅に高まります。

④の構造体調査結果についても、指定機関等と事前に情報共有し、仮に②の段階で法不適合部分(注:是正工事で対処できるような内容であった場合)があった場合、その是正方法についても協議します。

⑥不適合部分(違法部分)の是正工事

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不適合部分(違法部分)があった場合は、現行法に適合するように、是正工事を行います。

以上の現況調査と是正工事の報告書(現況調査報告書)を⑧増築時の確認申請書類に添付し、指定機関等の承認を得ることで、晴れて増築の確認申請手続きを行うことができるようになります。

以上が①から⑥までのおおまかな流れです。

ご覧いただいたように、実際の現地調査では、法的にグレーな建物に対して多額のコストをかけ、フタを開けてみなければその実態が判明しない法的リスクを抱えながら進めていかなければなりません。

仮に、調査段階で法不適合部分が見つかり、是正工事が出来ないような内容であった場合は、増築不可であり、違法建築物であるという情報だけが残ります。

このケースでは、増築によって既存建物全体の価値が大幅に上がることが計画段階で明らかだった為、これだけの調査に取り組む意義はあったと思いますが、ここまでの手間とコストをかけてまで調査を実行し、増築しようと考える建物所有者の方は、ほとんどおられないのではないでしょうか?

建物を新築される際には、必ず『検査済証』は取得しておきましょう。

フィールド建築設計舎

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