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建築ブック『竣工図書』

私達が設計活動を通じて培ってきた建築の知恵や知識の中で、皆様のお役に立ちそうな情報をご紹介させていただく『建築ブック』の第8回。

 

今回は、建物ではなく、それに付随する『書類』についてのお話です。

 

住宅などの新築時では、どうしても建物本体に意識が向きがちで、書類関係はつい後回しという方も少なくないと思いますが、建物を長期的に維持・管理していくうえで、これらの書類はとても重要です。

 

今回は竣工時に設計事務所、もしくは建設会社がお渡しする竣工書類(竣工図書)のなかでも特に重要な3つの書類についての説明と、なぜ重要なのかについてお話したいと思います。

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現在の物価上昇が続く世の中を見ていると、新築の建物を次々と建てていく時代から、現存する建築物を売買、もしくは改修や修繕を重ねながら長く活用していく時代へと移り変わりつつあるように感じます。

 

私達の事務所でも、増築やリノベーション、コンバージョンといったご相談が増えています。

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こうした増築やリノベーション(大規模修繕・大規模な模様替え)、コンバージョン(用途変更を伴う改修)などのの改修設計を進めようとする際、私達がまずお伺いするのは、『図面や書類はお手元にありますか?』です。

 

改修規模や工事内容にもよりますが、

具体的には「竣工図」「構造計算書」「検査済証」の3つ。

 

下図のように、これらの書類は、今後、増築や改修の設計を行う場合の基礎となる資料です。

もう少し詳しくご説明致します。

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竣工図


竣工図とは、工事の過程で生じた設計変更も含め、竣工(完成)時点における形状・素材・工法・寸法・構造・設備などを具体的に記録した、建物の最終状態を表した図面で、ごく小規模なリフォーム工事を除けば、ほぼすべての改修計画において必要となる、最も基本的な書類です。

この図面がない場合、増築や改修設計の基礎となる『現況図』を現場調査(建物測量等)だけで作成しなければならず、費用、時間などのコストが大幅に増加します。

また現場調査においても、建物を部分破壊しない限りは天井裏、壁内部、床下、地中埋設管といった「目に見えない部分」は調査することができず、結果的にそれらの部分は推測に頼らざるを得なくなるため、工事時点での設計変更や工事費の増額が発生しやすくなってしまいます。

構造計算書

建物の骨格となる柱や梁、基礎といった構造体が、地震や風圧などの外力に対して安全であることを構造力学計算よって証明した書類です。
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増築やリノベーションでこの書類まで必要になるケースは殆どありませんが、既存建物に新たな荷重を加える場合、地震などの水平力を負担させる場合、また既存建物を耐震補強する際には必要となります。

このようなケースはほとんどないものの、

検査済証

検査済証とは、工事完了後に行われる完了検査に合格し、建築基準法に適合していることを公的機関が証明した書類で、建築基準法で規定された規模や内容以上の増築・改修工事を行う場合、最も重要な書類となります。

 

例えるなら、車における車検証のようなもの。

 

車検証のない車は公道を走れないのと同じで、検査済証がなければ法に適合した建物という証明が失われている状態になります。

 

現在では、国土交通省から『既存建築物の現況調査ガイドライン』が示されており、検査済証のない建物であっても、私達のような建築士が建物を調査して現況図書を作成し、指定確認検査機関による法適合状況調査を経た後、必要な場合は是正工事を行うことで、増築・改修の確認申請手続きを進められるようになってはいます。

が、経験上、実際の調査・是正のプロセスは、増築や改修の内容によっては、新たな設計そのものよりも多くの時間的、費用的なコストを要するものという感想です。

 

以下は、国土交通省が調査、発表した資料です。

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このブログを書くにあたって検査済証の取得状況を調べて驚いたのですが、1998年時点では約40%の取得率で、令和以降でも20件に1件は取得していない現実があるようです。

 

 

 

これらの書類は、竣工当時はあまり意識されないかも知れませんが、何十年後かの改修、もしくは売却のタイミングで「保管しておいてよかった」と思う日が必ずやってくると思われます。

 

 

今回は、既存建物の増築、改修や売買において重要となる3つの書類についてお話ししてきました。

何かの参考になれば幸いです。

 

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