FOLLOW US

BLOG

建築ブック 03『窓の遮音』

私達が設計活動を通じて培ってきた建築の知恵や知識の中で、皆様のお役に立ちそうな情報をご紹介させていただく『建築ブック』の第3回。

今回のテーマは音。

中でも、建築設計で特に気を遣う、騒音(望ましくない音)についてお話したいと思います。
01大阪環状線に面している当事務所の屋外部騒音:70dB(室内:40dB)

 

騒音はdB(デシベル)という単位で表され、下表のような指標が定められています。

1
地域差、個人差はありますが、日中は50dB、夜間は35~40dB以下であれば『うるさい!』と感じる方は少ないということになります。(もちろん、テレビを見ている時と、寝ている時とでは感じ方は変わってくるので、一概には言えませんが)

 

 

続いて、音の伝わり方についてご説明します。

下図をご覧ください。

2

音の伝わり方には、空気伝播固体伝播の2種類があります。

 

 

空気伝播音は、その名の通り、空気を媒体として伝播する音のこと。

例えば、上図①の屋外からの自動車のエンジン音や、②の隣室に置いたスピーカー等からの音漏れ、または話声などがこれにあたります。

 

 

対して、固定伝播音は、建物に与えられた衝撃が、伝播した先の壁・天井・床を振動させ、音となって現れるもの。

 

上図②のようにバスケットボールの落下音や掃除機をかけている音、また上階の歩行音などもこれに該当します。いわゆる振動音のことですね。

 

 

 

 

その中でも、今回は上図①屋外からの空気伝播音(騒音)に対する遮音についてお話ししたいと思います。

 

 

遮音とは文字通り、障害物(壁・窓など)で音を遮ること。

遮音性能が高い壁は屋外から聞こえてくる音を小さくしてくれます。

 

※以下、遮音性能について〇dBと記載しますが、これは、基準となる周波数500Hz(中音域:男性の話し声程度の高さ)の場合です。遮音率は周波数(音の高さ)によって異なり、基本的に高周波数(高音域)ほど遮音しやすくなるという特性があります。

01

遮音性の高い、一般外壁材と言えば、鉄筋コンクリート(RC)の壁。

 

図のように、壁厚150mmに囲まれた空間の場合、屋外で80dB(かなりうるさい)の騒音環境でも、室内は30dB(かなり静か)になります。(冒頭の騒音レベルの表を参照ください)

 

ちなみに50dBの遮音性能はかなり優秀な方で、外壁の断面構成にもよりますが、木造でこのレベルの遮音性能を確保することは、なかなかに困難です。

 

 

 

 

上図のように周囲をコンクリートで囲まれた空間の場合、遮音性は高まるものの、居住環境としては最悪というか住めません😅  当然、下図のように窓(開口部)が必要となります。

 

02

 

皆様も実生活でお分かりだと思いますが、騒音で問題になってくるのは窓(開口部)です。

現行の普及品サッシでも25dB(昭和後期:15dB程度)の遮音性能しかないので、壁の遮音性能(50dB)が高くても、騒音を遮ることができません。

 

 

ではなぜ、窓の遮音性が低くなるのでしょうか。

 

99

一番の原因は、上図のようなサッシの隙間です。

 

音は空気を媒介にして伝播するので、空気が流入する隙間があると、遮断することができません。隙間が多い窓=気密性、水密性が低い窓は、おのずと遮音性も低下します。

 

そういう点で、旧来の加工精度の低い(隙間の多い)木製建具は、アルミサッシより遮音性が低くなる傾向にあります。

 

ただし、加工精度が高く、サッシ枠と障子の接合部にパッキン等を施した高性能木製建具の場合、アルミサッシと同等の性能を有するものもあります。

 

 

 

 

ここからは、窓の遮音性を高める方法をいくつかご紹介させていただきます。

 

03

1番目は、より高気密なサッシ(防音サッシ)を採用する方法。

 

現行普及品サッシの性能はT-1等級(25dB)ですが、T-2等級〈30dB)の防音サッシやT-3等級(35dB)の高性能防音サッシがあります。

 

 

この際、注意しなければならないことは、ガラスの選定。

 

普通の単板ガラスの場合、厚さ6mmで30dB程度の遮音性能がありますが、特定の周波数域(主に高音域)では、遮音性能が著しく低下する現象(コインシデンス効果)が発生します。ちなみに、厚さ6mmのガラスで2000Hz。 ※厚さによって低下する周波数域は変化します。

 

このコインシデンス効果を抑制できる『防音合わせガラス』をサッシと合わせて採用することが重要になってきます。

 

 

 

また、近年の高気密高断熱住宅でよく採用される複層ガラス(断熱ガラス)の場合も注意が必要。

 

複層ガラスは断熱を目的としているため、2枚のガラスの間に空気層がありますが、低周波数域(125~500Hzの低音)ではこの空気層をバネにしてガラス同士が共鳴し、遮音性能が低下する『低音域共鳴透過』という現象が発生してしまいます。

 

近年では、この現象を防止する防音構造を搭載した製品も開発されており、断熱、防音の両方を確保したい場合、このようなガラスを選んでみても良いかもしれません。

 

 

 

04

開け放つことはできませんが、遮音性能に関しては、ガラスブロックも非常に優れた製品です。

0

写真のように、ガラスブロックは分厚い2枚のガラスを中空構造に加工したブロックで、内部が0.3気圧と真空状態に近いため、高性能防音サッシと同等のT-3等級(38dB)に相当する性能があり、採光できる透過性材料の中では、最高の遮音効果を有しています。

 

 

05

現在、開発されている製品の中では、1重で遮音できるのはT-3等級(35dB)まで。それ以上の遮音性能が必要な場合、サッシを2重に重ねる2重サッシという選択肢しかありません。

 

サッシの間隔は10cm程度確保せねばならず、スペースとコストを要しますが、遮音性能は40~45dBもあり、最高の遮音等級であるT-4(40dB)以上の遮音性能を確保することも可能です。

 

私共も、2重サッシまで採用した経験はありませんが、このクラスとなると、空港近辺や幹線道路の真横のような環境に建つ住宅やオフィスなどでしょうか。

 

 

 

 

06

最後は、窓シャッター。

近年、雨戸の代わりに戸建住宅等で設置することも多い窓シャッターですが、これにも多少ながら遮音効果があります。

 

私共と付き合いのあるメーカーの担当者からの話では、遮音性能8dB程度。それほどの遮音性能はありませんが、現行の普及品サッシ(25dB)と組み合わせれば33dBとなり、計算上は、防音サッシ(T-2)以上の遮音性能をもっていることになります。

ただし、当たり前ですがシャッターを閉じると採光ができないのが難点です。

 

 

 

 

今回は、遮音について長々と書いてしまいました。

最後までお付き合いいただいた方、お疲れさまでした。

何かの参考になれば幸いです。😀

 

 

 

 

 

 

 

 

フィールド建築設計舎

PAGETOP