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建築ブック 01『夏涼冬暖と庇-01』

本ブログに『建築ブック』というカテゴリーを追加しました。

ここでは、私達がこれまでの設計活動を通じて培ってきた建築物(住宅、保育園、マンション、オフィス、古民家リノベーションなど)に関する知恵や知識の中で、読者の皆様のお役に立ちそうな情報をご紹介させていただく予定ですので、今後とも本ブログをご訪問いただければ幸いです。

 

 

さて、第1回のテーマは、『夏涼冬暖と庇』について。

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夏涼冬暖を意識して設計した住宅(LDK)

 

 

夏涼冬暖。

読んで字のごとく、夏は涼しく、冬は暖かい室内環境のことです。

温熱環境としては、住まいにおける理想的な環境です。

 

年間を通じて快適な外気温であればよいのですが、我が国には四季があり、夏は暑く、冬は寒いのが当たり前。昨今は、地球温暖化の影響からか、その気温差も激しくなってきているように感じます。

そうなると、ついついエアコンに頼りがちで、光熱費も嵩みますし、電力を消費するので、地球にも優しくありません。
ですが、建築物(住宅)を新築する際、季節ごとの南中高度に配慮し、南面に窓を設け、そのサイズと庇の長さを調整すれば、自然と夏涼冬暖な室内環境に近づけることができます。(南側に窓を確保できる室に関しての方法です。ご注意くださいませ。)

 

 

まず、南中高度とは何か?ですが、
これは太陽が真南にきて、いちばん高く上がったときの地平線との間の角度のことで、下の図のように、季節によって変化します。
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季節の節目における南中高度は以下の計算式で求めることができます。

 

 

夏至 (図中A)→  90°- (その場所の北緯) + 23.4°

春分・秋分 (図中B)→  90°- (その場所の北緯)

冬至(図中C)→  90°- (その場所の北緯) - 23.4°

 

 

余談になりますが、この式の23.4°とは、北極点と南極点を結ぶ地軸(自転軸)と公転軸(地球が太陽を周回する軸)の傾きのことで、地球上から見た太陽の軌跡が季節によって変化する要因となっています。要するに、日本(北緯35°付近)で四季を感じられるのは、この傾きのおかげなんですね。😀

 

大阪市(北緯34.7°)の場合、季節別の南中高度は以下のようになります。

春分(3月21日):55.3°

夏至(6月21日):78.7°

秋分(9月23日):55.3°

冬至(12月22日):31.9°

 

 

では、この南中高度と、南面の窓と庇の長さはどう関係するか?ですが、

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上の図の様になります。

この図では、春分(3月21日)、秋分(9月23日)の日を境にして、直射光が室内に入るようコントロールされています。

春分~夏至~秋分の夏季の期間、最も日差しの強い時間帯である11時~14時頃は、庇によって、ほとんどの直射光が室内に入ってこないので、適切な窓の配置計画を行い、通風を良くすれば、エアコンに頼る期間はかなり限定されます。

 

対して、秋分~冬至~春分にかけての冬季は、直射光が室内まで入り込こんで床を温めてくれるため、温まった床の輻射熱と対流効果で、自然と部屋全体が暖かくなります。
日本は、夏に比べて冬の晴天率が高いため、直射光を取り込める期間も長くなり、太陽の恩恵を余すことなく享受できます。

 

勿論、夜間はエアコンを可動させなくてはならない日もあると思いますが、断熱さえ適切に行っておけば、暖まった室温は長時間持続されるので、エアコンに必要な電力消費も抑えられます。

因みに、この場合の庇までの高さと外壁までの出幅の比率は、高さ1に対して、出は0.7程度となります。

 

図の住宅の場合、1階の南側に大きな庭があり、日当たりが良好なケースですが、都市部の住宅密集地でも、この考え方と吹抜け空間等を組み合わせれば、夏涼冬暖な住宅をつくることも可能です。

 

直射光を室内に取り入れたい期間については、人によって異なるので、一概に、春分・秋分を境にするのが良いかどうかについては意見が分かれるところかとは思いますが、夏涼冬暖な室内環境を優先するならば、この庇の比率(1:0.7)が良いと思います。

 

最後になりますが、近年はサッシの防水性能も高くなり、庇の無い住宅が増えていますが、たとえこの図の半分の長さでも、南側の窓には庇を設置されることをお勧め致します。夏の室温に大きく影響しますので。

 

こんな感じで、建築物についての情報を、今後も随時ブログに掲載していく予定ですが、もし、他にも知りたい事柄などございましたら、私達の知っている範囲でブログにしていきますので、コメント覧にご記入頂くか、メールなど頂ければと幸いです😀

 

 

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