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建築ブック 02『夏涼冬暖と庇-02』

私達が設計活動を通じて培ってきた建築の知恵や知識の中で、皆様のお役に立ちそうな情報をご紹介させていただく『建築ブック』の第2回。

今回のテーマも、前回に引き続き『夏涼冬暖と庇』。

もう少し掘り下げていきたいと思います。

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前回、住宅などの建築物の南側に窓サイズに応じた庇を設置すると、夏の強い陽射しは遮りつつ、冬は必要な日射を室内に取り込むことができるとブログでご紹介させていただきましたが、前回掲載した画像が簡単な模式図だったで、今回はもう少し詳しくCGでモデルを作成し、季節、時間別に検証してみたいと思います。

 

 

以下、今回の検証で設定した条件です。

建物の設定条件

A.4間(7.28m)角の平屋で軒の出無しの方形屋根
B.庇までの天井高さは2.5m
C.南面に幅2間(3.64m)高さ2.5mの窓を設置

季節の設定条件

前回のブログでは、日照時間を基準に夏至、春秋分、冬至で検討しておりましたが、今回は、より体感的に暑い時期、寒い時期を考慮し、立秋(8月10日)、春分(3月21日)秋分(9月23日)、大寒(1月20日)で検討することにします。

 

 

最後にモデル。次の3タイプとします。

 

タイプ1:庇無し
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タイプ2:庇の出90cm
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タイプ3:庇の出180cm
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検証結果した結果は、次のようになります。
各季節で朝9時と正午(12時)の2パターンを検証しています。
(昼の3時は朝9時の反転とお考えください)

庇無しタイプT1
庇、軒が全くない場合、真夏(8/10)の最も暑い時期にもほぼ1日中、室内に直射光が射し込みます。カーテンで遮光しても、直射光で熱せられたカーテンが室内に再放熱するので室温が上昇。

また、直射光で南面外壁が1日中温められた結果、外壁の断熱材周辺に籠った熱が夜間を通じて放熱し続けるので、エアコンの効率も低下します。

反面、冬は庇が有る場合と比べて、日射を取得できる割合が多い(冬の正午で窓から3.6m程度まで日光が射し込む)ため、冬場重視と言えなくもないのですが、年間通して考えると、近年一段と増してきている夏の暑さに対して脆弱すぎると思います。

 

庇の出90cm
T2
夏場、90cmの庇が効果的に機能します。最も暑い8月10日近辺では、直射光は室内に入らず、庇下テラス床に止まっています。

外壁もほとんど庇の影になっているので、温度上昇が少なく、庇無しと比べると室内ではかなり快適に過ごせるでしょう。風がある日に引き戸を開けておけば、エアコン無しでも快適に過ごせると思います。

秋分前から徐々に、室内に直射光が入り始めるので、残暑の時期は多少暑いですが、このあたりは、冬の日射取得量(冬から春にかけて暖かい)とのバランスだと思います。冬場暖かい家を好まれる方で、真夏の厳しい暑さは抑えたい方に向いていると思います。

 

庇の出180cm
T3
庇を180cmまで突き出すと、夏場でも風のある日ならば庇下のテラス(外壁付近)でも快適に過ごせるでしょう。春分、秋分を境に、室内に直射光が射し込むため、冬場でも適度に暖かさが保たれます。

庇90cmタイプと比べると、こちらは夏の涼しさ重視。また、年間を通じて過ごしやすい半屋外のテラスで何かしたい方向きとも言えると思います。

 
快適な住環境をつくる上で、生活される場の温熱環境(夏の涼しさ、冬の暖かさ)は最重要事項のひとつだと考えておりますので、次回以降も何かと書いていけたらと思います。

 

長文になりましたが、最後までお読みいただき有難うございました。😀

 

 

 

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